■2007-05-23(水) 写真を撮るってスゴイことかも
▼ 岡井ハルコ/山崎由美『写真の神様』
小説版『電脳コイル』をamazonで買うときに、1500円に足らなかったので、追加で買った作品。内容も作者もまったく知らなかったのだけど、新刊リストでタイトルを見ただけでなんとなく予感がした。もちろんアタリだった。
母親の再婚に伴う新しい家族との関係に悩む女子高校生が、同級生の男子高校生二人と写真甲子園に出場。作品づくりをするなかで、それぞれが自分探しをする。高校生の様子が生き生きと描かれている。(北海道新聞:写真甲子園 漫画単行本に)
ざっくりとしたあらすじは、こんなところ。割とありがちな少女マンガのフォーマットに乗っかっている。言ってしまえば、お涙頂戴もの。
ただ、他の凡百な作品と違うのは「写真を撮る」という行為の根深さを描こうしているように見えるところだ。少年が屋上のフェンスに捕まってタンポポを撮影するシーン。少女が駆け寄ってくる妹を撮影するシーン。少年が追い求めていた景色に出会った瞬間にシャッターを押してしまうシーン。「写真」がテーマという事情の要請が、そういう描写をさせているのは事実だ。でも、そういう瞬間にカメラを持っていたら、自分もシャッターを押しているだろうと思わせるだけの何かがある。なんというか、まさに業としか言いようのない何か。
もしかしたら、作者はあまり考えずに描いたのかもしれない。でも、たくさん写真を撮っていると、何も考えずにシャッターを押してしまうことがある。そういうとき、写真を撮ることには、きっと単に記録するということ以上の何かがあるという気にさせてくれる。
記者という仕事柄、写真を撮る機会は普通の人より多い。しかもデジカメだと失敗を気にせずにバンバンとシャッターを押せるので、枚数だけは万の単位でやたらと多い。仕事で写真を撮っていて、ある時にふと気がついたことがある。それは写真を撮るということの、押しつけがましさだ。撮る瞬間と、撮った写真。両方にはある種の傲慢さが潜んでいると思う。このことは、もっと考えてから、また書きたい。
閑話休題。さて、カメラマンが登場するマンガは多いけど、写真を撮ることそのものをテーマにしたマンガは意外と少ない。その中でも忘れちゃならないのが秋重学/川崎ぶらの『ニナライカ』。1996年頃の作品で、まさしくガーリーフォトブームの真っ最中。カメラと女子高生っていう、いかにもなアイコンが揃っていて、コジャレ感たっぷりなんだけど、手堅くまとめていて面白い。それにしても、秋重学の描く女の子は、すっきりとした線なのに妙に肉感的な感じがして、エロいことこの上なしw
いや、でも、青春とカメラと写真を題材するんだったら、もしかしたらそれは重要なポイントかもしれない。根拠レスだけど。もし『写真の神様』に足りないものがあるとしたら、その部分かもね。
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