■2007-06-18(月) そうとうスリリングなマンガ業界内幕ギャグマンガ
▼ 唐沢なをき『まんが極道』
唐沢なをきの『まんが極道』が、そーとー面白い。このおもしろさは人に伝えられずにいられない!
唐沢といえば『カスミ伝』シリーズで、マンガの技法的を逆手に取って徹底的に遊びまくるメタ・マンガをやっていたけど、『まんが極道』はマンガ業界そのものの内幕をルポタージュ的に扱いつつギャグにするという、かなりスリリングな内容。
ちょっとマンガに詳しければ、下書きのまま雑誌に掲載とか、女性マンガ家の枕営業とか、SFマンガの不遇とか、宗教に走ったマンガ家とか、アシスタントに手を出すマンガ家とか、そんなような話しはあたりまえに知っているだろうけど、それをそのまんまマンガのネタにしてるんだもんなぁ。スゲェ。
だって、作中に出てくるマンガ家は全然ありそうもない変な名前を付けたり、絵柄もまったく違うものにしたりして、特定のマンガ家を想像させないようにしているのに、実際に読んでいると、どうしても現実のマンガ家を思い浮かべてしまうんだもんw
唐沢なをきは、同じようにマンガ家をネタにした作品『漫画家超残酷物語』も出しているけど、こっちはトキワ荘時代からニューウェーブくらいあたりの、いわば一昔から二昔以上も前の世代をネタにしている。この世代のマンガ家の逸話は他でもギャグとして扱われてるし、一種の歴史モノのギャグマンガ的に読むことができるけど、『まんが極道』の方はどう見ても現在進行形の話しもあって、生々しいことこの上ない。
1つ気になるのは、これまで唐沢なをきのマンガは、読み手の身体的、生理的な感覚に訴えかけるようなギャグが多かった。つまり、元ネタを知らなくてもわかるギャグ。それに対して、『まんが極道』はだいぶ様子が違って、業界の内幕モノっていう、元ネタを知らないとあんまり楽しめないギャグが多くなっている。
この感覚はどちらかというと、実兄の唐沢俊一とのユニット「唐沢商会」名義で書いた作品に近い印象だ。唐沢なをきには珍しく、音楽関係やSF関係をネタにした回には協力者や監修者が付いているので、その辺の影響が多少あるのかもしれない。
唐沢商会名義の作品には『脳天気教養図鑑』や『怪体新書』のような雑学ネタ中心のルポタージュモノと、『蒸気王』や『近未来馬鹿』みたいなレトロ趣味を満載したストーリー・ギャグという、2つのパターンがある。『まんが極道』の場合は、後者のようなストーリー・ギャグでありながら、マンガ業界のネタを満載したルポタージュ要素もあって、2つのパターンの両方が混ざっている感じ。
唐沢なをきを読み始めてから、だいたい12〜13年くらい経つけど、その間にオール版画のマンガや、昭和初期の児童文学のパロディ(装幀まで真似てる!)、あと「犬ガンダム」とか、まったくペースが落ちずに、どんどん面白くて新しいことをやり続けている。すごいなぁ。
△ yomoyomo [SPA!には既にブログネタが記事になっていたと思います。 あーあ、あ。]
△ buru [そうでしたか。うーむ、立つ瀬がないなぁ。]