■2005-11-10(木)
▼ 『限界の思考 空虚な時代を生き抜くための社会学』
宮台と北田の対談形式の本。まだ冒頭の100ページ程度だけど、語り口は二人のいつもの調子。最近の宮台の戦略については、3月にあった北田暁大×東浩紀のトークショーに宮台が乱入したときに、ちょっとネタ晴らしをしていたけど、それに関連した箇所を引用しておこう。
北田 宮台さんの天皇論については、すでにいろいろな方が疑問を提示されていますし、批判や応答が活字媒体に掲載される機会も多いですね。ところが、私にはそれをいくら読んでも、宮台さんの天皇論がよくわかりません。いつも「宮台さんは、なにを考えているのだろう」と頭をかかえてしまいます。「もしかしたら、こう読めるのかなあ」という程度の感想的なものなのですが、こんな感じで理解してよろしいでしょうか。つまり、宮台さんという人は、天皇を入れ替え可能な煽動デバイスくらいにしか考えていないバカ保守にたいして、「お前らのやっていることは、天皇を利用しようとしているだけで、ちっとも天皇を敬っていないじゃん」という。そして超越的な他者の入れ替え不可能性を元手に、「ホンモノの天皇を理解するためには、俺のように天皇を捉えるしかないんだよ」とたたみかける。こうすることにより、バカ保守やバカ右翼をつぶしていく。でもじつは、宮台さん自身がもっとも不敬な人で(笑)、そういうバカ保守を一掃し、「集合的沸騰」を上首尾に操舵するために、それこそ天皇を「利用」している……。最近の天皇論への深入りは、こうした戦略にもとづいているのかなあ、と私は考えたりしているんですが、どうでしょう。ます。
宮台 それはそのとおり。たしかに、大塚英志さんとの対談で言ったように、僕の戦略は「右には右を、左には左を」です。日本的な言説空間では、右に左を対置し、左に右を対置するような物言いは、効率が悪い。むしろ、エセ右には右の本義を対置し、エセ左には左の本義を対置するのがよい。日本の右も左もどうせバカなんで、これが有効なんです。
双風舎 (2005/10/22)
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