■2003-01-31(金) [長年日記]
▼ ベストサイエンスブック2002の投票
今年はこんな感じになった。個人的にはけっこう当たり年だったと思う。あと2〜3冊ほど選びたい本があったけど、迷った末のこの5冊。
▼ スティーブン・レビー(斉藤隆央訳)『暗号化 プライバシーを救った叛乱者たち』(紀伊国屋書店)
今年一番、読んでいて楽しかった本。新しいインフラになりつつある公開鍵暗号を中心に据えて、著者らしい丁寧な取材で多くの物語を掘り起こしてくれている。
▼ デイビッド・ホロビン(金沢泰子訳)『天才と分裂病の進化論』(新潮社)
分裂病(総合失調症)に関するいろんな不思議な事象から、人の脳の進化について面白い仮説を導き出していて、読んでいて興奮させられた。脳に関する話しはやっぱり不思議で面白い。
▼ L.アンドルーズ/D.ネルキン(野田亮/野田洋子訳)『人体市場 商品化される臓器・細胞・DNA』(岩波書店)
医者や製薬会社に対する著者達の批判にすべて賛同することは出来ないが、確かに暴走としか言えない事例が存在するのも確かなので、このような本も必要だと思う。
▼ 佐倉統『進化論という考えかた(講談社現代新書)』(講談社)
進化論を生物学の一分野にとどめず、広く人文系の学問までも取り込める可能性を示してくれている。多少、大風呂敷の感じがしなくもないけど、個人的には今後に期待大。
▼ ディーン・ヘイマー/ピーター・コープランド著(吉田利子訳)『遺伝子があなたをそうさせる』(草思社)
人の社会的行動に関する遺伝子決定論は批判されることも多いが、脳内における化学物質の振る舞いがどれだけ人の思考に影響するか丁寧に説明してくれていて、勉強になった。