B.M.F.Diary

Think and Feel. Future is mine.

■2004-08-21(土) [長年日記]

華氏911

ちょっと外出して、映画館の前を通りがかったらちょうど開始の30分前だったのでフラッと入った。週末の夕方からの回で、客の入りは9割と言ったところ。入れ替えの30分前にはすでに100人くらい並んでいたが、客層は単純に話題になっている(?)から、見に来たって感じのカップルがほとんどで、そのなかにいかにも「ああ」って感じの人間が混じっていた。そんな中で、オレも1人で『Free Culture』を読みながら並んでいたんだが。

実は、「ボウリング・フォー・コロンバイン」は見ていないので、これが初マイケル・ムーア。いろんな人の感想から、少なくともまったくもってツマランということはないだろうと、安心して見に行った次第。

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まず、一般的な感想。ウェイン町山氏が書いているとおり、最初から最後まで今度の大統領選でブッシュを落選させるためのネガティブキャンペーンとして作られている。事前情報(その1その2)を仕入れすぎたせいもあるけど、普通にドキュメンタリーとしては観られなかったな。だから、はっきり言ってしまえば、大統領選の選挙権を持っていない日本人が観ても、意味がない(笑)。あるとしたら、マイケル・ムーアの次回作のためにちょっとでも資金を寄付しにいくようなものかもしれない。

意味がないというと怒られるかもしれないが、日本の報道はアメリカほどには偏っていないし、ブッシュとビン・ラディンの家族ぐるみの付き合いなんかは有名な話しだし、どれもこれも知っている人にとっては「何を今さら」といった感じ。そりゃまあ、いくら何でもみんながみんな田中宇を読んでいる訳じゃないから、華氏911で知ったって人も多いだろうけど、そういう人が今さらそれを知ったところで、民主党のジョン・ケリーの投票できる訳じゃない。

じゃあ、このオレの燃えたぎる怒りをどこにぶつければいいのか、そうだ対米追従ケツ舐め外交(by宮台真司)の小泉も悪いぞ、自民党を与党から引きづり落としてやれ、でも選挙はこの前終わっちゃったし、次の選挙にはたぶん忘れてるね、うーん残念。以上。

話しをアメリカに戻して、仮にブッシュが落選しても、ホワイトハウスの新しい主人はジョン・ケリーだ。共和党から民主党に変わる。で、それでアメリカは何が変わるんだ? 何だかさ、ブッシュがあちこちに爆弾を落とすようになってアメリカが嫌われたかのように言う人が多いけど、クリントンの時だって十分に嫌われていただろ。ただし、その理由は主に経済的な方向からだけど。東アジアではIMFは蛇蝎のごとく嫌われたし、WTOを開こうとすれば開催地は暴動のような有様。世界を引っかき回して付き従える手段に軍事的枠組みを使うか、経済的枠組みを使うかの差だけだ。アメリカが嫌われている? 何を今さら。

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次の見方。メディアリテラシーの恰好の教材としての「華氏911」。見ればわかるが、この映画は日本人が想定する「ドキュメンタリー」の作りとは違う。勘のいい人ならすぐにわかるだろうけど、とにかく大量に集めてきたフィルムを切り貼りして、マイケル・ムーアが思い描いたストーリーに仕立て上げられている。

昔、フジテレビのNONFIXで、偽のドキュメンタリーというのが放映されたことがある。あらかじめ用意した脚本にもとづき役者が演じ、それをドキュメンタリー風にハンディカムで撮影する。そのときは、あらかじめ「偽の」ということを明らかにしていたが、それを知りながら観たときのその映像から受ける違和感は、不思議なものだった。メタフィクションの裏返しみたいなものだったが、人の手が加わった映像の信じられなさというのを如実に実感したものだ。

そして、華氏911から受ける印象もそれだ。出てくる映像は、確かに現実のもので、実際に起こったことは間違いなのだが、どこからしらに「嘘くささ」が漂う。ポリゴン数だけは多いけどモーションがなっていないCGを見せられた時のような嘘くささほどではないが、何かが違うとハッキリわかる程度には。

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3つ目の見方。「泣ける映画」として。と思ったけど、長くなったので続きは今度。

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