■2006-12-07(木) [長年日記]
▼ 攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society
先週末に届いたので、さっそく見た。適当に感想メモ。完全にネタバレしてるんで、未見の人は注意。
おもしろい、すげーオモロイ。士郎正宗作品のアニメ化では今のところ一番おもしろいかも。
シナリオは「高齢化」「少子化」「ニート」という社会問題をベースに、原作のエピソードをマッシュアップ。原作ファンほど楽しめる。
トグサが隊長になっていたりするのがいい。「マテバへのこだわりは捨てたの?」「別に、捨てたわけじゃないさ」
原作(1と1.5と2)を踏まえていないと、理解できないシーンもあって、不親切ではある。
トグサとバトーの間にある微妙なニュアンスも、原作を知らないとわかりづらいかも。
ライナーノーツには原作の「攻殻機動隊1.5」を下敷きにしたとあるけど、意外に「2」のネタも細かく入っている。
素子が2nd GIGで「死んだ」はずのタチコマのAIを回収して、サポートAIとして使っている。
その名前が「ロキ」「コナン」「マックス」「ムサシ」。つまり「2」での素子のサポートAIと同じ名前。(あの支援AIってやっぱり「フチコマ」なのかなぁ?)
これまでの攻殻機動隊のアニメ作品の中で、もっとも原作に近い。
というか、押井版の攻殻と原作のギャップを埋める作品という感じ。
もともとSAC自体が「人形遣いがいなかった攻殻世界」というアナザーストーリーとして始まったものだけど、さらに押井版に対するアンチテーゼとも取れる。
今作での冒頭でのバトーは、イノセンスでのバトーほどじゃないけど素子の喪失に鬱々としてる。
ただ、イノセンスでは報われないままだったのが、SSSではハッピーエンド(ラストのシーンは違和感があるほどのハッピーエンド)。
SSSの結末は、原作の第1話「桜の木の下」がモチーフ。
そして、9課への素子の帰還。
つまり、映画版のGHOST IN THE SHELL → イノセンスの流れを、逆廻しにしている。
もう一つ、SSSの敵役「傀儡廻」。文字通り「人形遣い」のパラフレーズ。
映画では、人形遣いとの融合によって、素子は9課から去った。
SSSでは、傀儡廻との接触によって、素子は9課へ帰還した。
そして、傀儡廻の正体を暗に示すシーンがあるが、その通りに受け取れば犯人は素子。
つまり原作「2」のように、素子のグライダー(変異体)が真犯人。
SACの世界では、素子と人形遣いは融合してないので、本来はおかしい。
が、タチコマに「2」のサポートAIと同じ名前を付けているとおり、「2」の世界観も踏まえたものとして見れば、押井版とSACの2つに別れてとっちらかったアニメを、再び原作につなげるものとしての意味が見えてくる。
人形遣い(=押井守)との接触によって分裂した素子(=攻殻機動隊)が、傀儡廻(=神山健治)との接触で再び一つになる。
つまり、押井守の教え子である神山健治の、師匠への決意表明とも取れる。
まあ、とにかくおもしろいから見ろってことです。
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